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ここんとこの読書

“階段”
B1111

フィンガーボウルの話のつづき/吉田 篤弘:色々な味の小さなドロップの詰め合わせのような短編集。少しずつそれぞれの話がリンクし、なんとなくその連鎖の雰囲気を楽しむような小品。
 
ピギー・スニードを救う話/J・アーヴィング:「ガープの世界」「ホテル・ニューハンプシャー」を読んで以来10年ぶりくらいのアーヴィング。表題作が特に、作家の性のようなものを感じさせて面白い。フィクションの世界の力と可能性、そこから生まれた長編たちの世界の重さ。人は人生を変えられないけれど、作家は人生を創ることができる凄さを改めて思う。
 
反自殺クラブ IWGP5/石田衣良:巻を追うごとに失速していく感は否めない。4本中前2本は詰まらない、後2本はまぁ面白い。やはり、マコト本人がきちんと動く物語で無いとIWGPの魅力は生まれないのだと思う。
 
和宮様御留/有吉佐和子:幕末の動乱期の皇妹降嫁を、荒唐無稽といえる発想で展開した歴史物語にあっと言わされる。子を思う母、そして自我を無視されようとする女、犠牲になる女たち、歴史の表舞台には決して立たないの女たちの物語は、道化染みて見えるも、哀しく強くたくましい。少し皮肉な、女というものを突き放したような視点からの語りが、意外にも心地良い。そして、これを読んでいると、ベッタベタの京都弁に戻っている自分が居る。文字の力の強さに参る。
 
小説こちら葛飾区亀有公園前派出所:結局こういうトリビュート物は、「こち亀」への溢れんばかりの愛と、その小説が「両さん」というキャラクターで無いと成り立たない物語で無いと意味がないと思う。(ちなみに、私は「こち亀」という漫画は数度しか読んだ事が無く、主人公のフルネームさえ知らない。なんとなく、どんな漫画かというイメージは持っている程度。あと、執筆陣できちんと小説を読んだ事があるのは、京極、石田の2名のみ)そういう意味で上手くいってるなぁと思うのは、大沢、島田 京極かな。特に京極夏彦のは、短編のくせにこの密度の高さと構成の素晴らしさには恐れ入った。京極堂シリーズの登場人物のその後にチラリと触れている点も、愛読者としては嬉しい所。
あと、全編通して読んでみて強く感じたのは、「両さん」というキャラクターのうざさ加減。(失礼)漫画の場合、絵でカバーされてうざいけれどどこか憎めないというキャラクターになっている部分が、小説では文章のみの表現になっているためうざいだけで終っているように見受けられるものが何篇かあった。この辺は、原作に対する愛情の差なのか、それとも私の両さんへの買いかぶりなのか、はてさて。

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