昨年、牡丹灯籠を観た時にいただいたチラシで行こうと心に決めていた花組芝居の夜叉ケ池。Wキャストの武蔵屋の方を選んだのは、日程の都合。楽日に芝居を観るのは初めて。ワクワクしながら青山円形劇場に向かう。今回も月影十番勝負に続いて最前列、円形劇場の最前列の臨場感はたまらないものがある。鼻先10cm、舞台と客席の段差15cmだもの。
で、今回の舞台、その円形劇場の特性を非常に良く生かしていると思った。僅か15cmの段差が結界を作っているのだ、物語と現実を隔てる結界を。
旅をして山郷にたどり着く山沢は、“客と同じ扉”(それ即ち、我々の住まう“日常”)から登場する。客席でしばし立ち止まった彼は、見えない清流を飛び越し“舞台”に上がる。その時、彼は“異世界”への侵入を果たすのだ。
舞台の幕切れもそう。白雪姫に旅支度を整えてもらった山沢は、眷属たちや魚になった人間たちが泳ぐ水底(それ即ち“舞台”)から、結界を飛び越え“現実”、我々の座る客席の側に立ち返る。そして我々が現実に帰って行くのと同じ扉から出て行く、物語の外側へと。彼同様「そちら側」には行けない切なさを胸に、我々は山沢と共に魑魅魍魎の住まう鏡花の世界から東京へと戻ってくる。接する筈のない2つの世界の幕が閉じる。そう感じた。なんとも素晴らしい。
内容に関しては夜叉ケ池ままなのだが、眷属たちの弾けぶりは流石花組芝居と言うところなのか。サルティンバンコを私は連想しましたよ。あの科白回しを、あの衣装でやってしまう潔さは何とも言えない、好き。
晃の「跣足で来い。茨の路は負って通る」が物凄く格好良かったり、最後の山沢の疎外感を感じる寂し気な去り際とか、座長様の愛らしい与十とか、日替わりゲスト・暴れ狂いそば屋を殺してオチの出来ない時そばに自分で切れる春風亭昇太さんとか、印象深く楽しく観させていただいた。
観客を舞台に上げて姫様を慰める踊りのシーンで、雷象さんに手を引かれ舞台に上げて頂いた。魑魅魍魎の仲間入り♪
しかし、舞台の上って、本当に照明が暑くて驚く。皆様よくあんな場所で芝居して下さるものだ。役者さんてスゴいな。記念写真は宝にいたします。(笑)
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